事業承継をしたいものの、後継者がいないために承継できないケースが増えており、このままではやむを得ず廃業するしかなくなってしまいます。
ただ、このような状況を打開するために後継者募集をおこなう人も増えています。
今回は事業承継をおこなう先の後継者募集について解説します。
この記事でわかること
事業承継は後継者不足に悩まされやすい
事業承継をおこなうためには後継者を見つけなければなりません。しかし、後継者不足に悩まされている企業が多いのが事実です。
まずは後継者募集をしなければならない状況と実際に後継者募集をおこなうための選択肢について解説します。
- 中小企業などは後継者が少ない
- 後継者を探す選択肢
中小企業などは後継者が少ない
帝国データバンクが公表している「全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)」の調査結果によると、中小企業の後継者が不足しており、事業承継ができない状況が続いています。
2021年の全国・全業種約26万6000社における後継者不在率は61.5%で半分以上の会社が後継者不足だと回答しています。黒字で事業を続けられる状況であるにも関わらず、後継者募集をしなければ廃業する危機に直面しています。
ただ、2020年に帝国データバンクが実施した同じ調査の結果では、後継者不在率は65.1%であったため、状況は改善しているようにも見受けられます。
ただし、すでに廃業してしまった事業主も含まれているため、実態としては後継者募集をしなければならない状況だと考えられます。
なお、2021年は、どの業種においても後継者不在率は前年度を下回っています。
依然として半数以上は後継者募集が必要な状況ではあるものの、実際に募集をして改善している事業主もいらっしゃいます。
後継者を探す選択肢
後継者募集をおこなう選択肢は大きく分けて4つあります。それぞれについて特徴を解説します。
親族や従業員
後継者募集の選択肢で最初に考えるべきは家族や従業員です。
事業承継は親から子へとおこなわれるケースは多々あり、実際に後継者として子を考えている人は多いといえます。
ただ、子の意向から事業承継に至らないケースも多くあります。
また、子ではなく従業員を事業承継の選択肢とするケースもあります。従業員の中で重要な役職に就いている人材ややる気のある人材を後継者とする創業者もいらっしゃいます。
前向きに考えてもらえるケースも増えており、後継者を探す選択肢として経営者は持つべきです。
公共サービス
親族や従業員の選択肢が難しければ、公共サービスを活用する方法があります。
公的機関が事業を引き継いでもらいたい人と事業を引き継ぎたい人をマッチングするサービスを利用して、後継者募集をします。
日本政策金融公庫では「事業承継マッチング支援」と呼ばれるサービスを提供しています。
後継者募集をしている事業主と事業承継をしたい個人や法人をマッチングするプラットフォームです。
日本政策金融公庫がサポートしてくれるため、安心して利用できるメリットがあります。また、日本政策金融公庫は日本中を対象範囲としているため、地方自治体のサービスよりもマッチングできる可能性が高まっています。
例えば事業承継マッチング支援の公式サイトには北海道の企業と東京都の企業がマッチングしており、エリアを超えて後継者募集ができます。
サーチファンド型M&A
サーチファンド型M&Aは事業承継に対して意欲のある人材へ「事業承継先の調査」「事業承継に必要な資金の支援」をして、事業承継のサポートをおこなう手法です。
事業承継への意欲があっても資金不足が壁になるケースが多々あるため、サーチファンドがこの問題を解決します。
後継者募集をおこなう側はサーチファンドから人材を選択することでよい人材に事業承継できる可能性が高まります。
サーチファンドには意欲が高くスキルも高い人材が在籍するため、親族や従業員よりもよい人材が見つかるかもしれません。
ネクストプレナー大学では、サーチファンドが見つけ出す人材を「ネクストプレナー」と定義しています。
自ら起業するのではなく、既存の事業を承継してより事業価値を高める人材です。
ネクストプレナー大学で学んでいただければ、このような「後継者募集をしている企業から選んでもらえる人材」へのキャリアが見えてきます。
銀行や弁護士
後継者募集を見据えて銀行や弁護士などの士業との交流を増やしておくべきです。
企業や個人が事業承継してくれるわけではないものの、後継者募集のサポートをしてくれるかもしれません。
例えば、相談すると事業承継に適した人材を紹介してくれる可能性があります。
ただ、交流がない銀行や弁護士にいきなり相談をしても、日頃の付き合いがないため、事業の状況も理解できておらず、優先してサポートしてもらえません。
後継者募集をしたい段階になってから付き合いを開始しても間に合いません。
事業を続けるにあたり借り入れをしたり弁護士にサポートを依頼するケースは多いといえます。サポート費用は発生しますが、事業承継の後継者を募集できるような付き合いは持っておくましょう。
事業承継する後継者募集が増えている業界
事業承継のために後継者募集が増えている業界があります。どのような業界で後継者募集が増えているのかご紹介します。
- 建設業
- 製造業
- 製薬業
- IT業
建設業
建設業は帝国データバンクの後継者不在率調査で最も不在率が高い業界です。
その理由は多岐にわたりますが、その中でも注目したいのは「いわゆる一人親方」が多く、従業員がいない点です。
一人で働き続けてきたために、従業員や子に事業承継する選択肢がなくなっています。
事業内容が多岐にわたる(住宅の建築から内装業まで)業界であるため、後継者募集の内容も多岐にわたります。
建設業のスキルがあれば、後継者募集に応えて事業承継しやすいといえます。
製造業
製造業は事業承継や統合が盛んに実施されています。
高いスキルを後の世代に残すために事業承継されたり、事業拡大のために事業承継やM&Aがおこなわれています。
製造業は大手企業が注目されやすいですが、帝国データバンクの情報を参照すると中小企業や個人が圧倒的多数です。
そのため、製造業を生業とする企業や個人において、事業承継をしてもらうために後継者募集が増えており、小規模・創業者の年齢から事業を引き継ぎたい人が多いと考えられます。
製薬業
製薬業では薬価の変動などにより事業承継が進んでいます。
また、古くからある製薬会社では後継者不在により事業承継を目指しているケースがあります。
製薬業界には、大手企業だけでなく、特定の薬だけを製造する小規模な事業者も日本中に存在します。
これらの小規模な事業者において、後継者不在から後継者募集がおこなわれています。
IT業
IT企業においても後継者募集がおこなわれています。
先端の企業だと思われがちですが、実際にはやや異なる部分がある状況です。
IT企業の中でも古くからある中小企業では、経営層の高年齢化が進んでいます。
ベンチャー企業のように若手が少ない状況となってしまい、事業承継してこれからの発展に期待がされています。
後継者募集をして事業承継を成功させる3つのポイント
後継者募集をして事業承継を成功させるために、知ってもらいたいポイントを3つ解説します。
- 経営者としての素質があるか判断する
- 後継者の育成に時間を割く
- 企業価値を高めておく
経営者としての素質があるか判断する
経営者の素質があるか判断しなければなりません。
後継者募集に応募があったからといって、誰に事業承継してもよいわけではありません。
後継者候補のスキルを吟味して総合的に判断すべきです。
判断には「言葉遣い」「服装」「事業に対する理解」「業界経験」など数多くの観点を踏まえなければなりません。
自分の経験を存分に活かし、自分の事業を引き継ぐ経営者に適しているか判断します。
後継者の育成に時間を割く
後継者の決定ができたならば、育成に時間を割きましょう。
経営者に適した後継者が見つかっても、すぐに同じように事業を推進してもらうことは不可能です。
まずは一緒に現場に入るなどして、後継者を育成しましょう。
また、育成の一環として取引先との顔合わせなどにも同行すべきです。
自分の口から後継者を紹介しておくと、取引先との信頼関係も築きやすくなり後継者も事業がしやすくなります。
企業価値を高めておく
後継者募集をして興味を持ってもらえるように、企業価値を高めておくべきです。
誰からも興味を持たれない状況では後継者募集をしても意味がありません。ただ、後継者募集をおこなう段階になってから企業価値を高めるのは限界があります。
日頃から後継者募集を意識し、財務や研究開発力、マーケティング力を強化して、企業価値を高めておくべきです。
まとめ
帝国データバンクの調査では半分以上の企業や個人が後継者不在に悩まされており、事業存続のために事業承継できる後継者募集が急務です。
ネクストプレナー大学では、このような後継者募集に応えられるような人材の育成をおこなっています。実際に上場企業で経営者を経験した講師が経営スキルについて指導し、優秀な後継者候補を目指します。
自分の持つスキルと経営スキルを組み合わせて、他者に負けない後継者候補になれます。
「0→1起業はハードルが高い」と考えている方は、後継者不在企業の資産や人材、既存の戦略といった「現有資産」を引き継ぎ経営者になれる事業承継を、キャリア構築のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。